じっとしていられなかった僕は、あてもなく散歩に出かけた。
見上げれば、広大な黒に無限の粒子。
あの光は、何千年何万年昔の輝きなのだと聞いて、未だに信じられないでいる。
天然のプラネタリウムを、今は僕だけ、ひとり占め。
静かな夜。
人も車も、明かりさえもまばらな、深い夜。
街灯だけが当たり前のように道を照らしている。
電線は蜘蛛の巣のように張り巡らされていて。
なるほどネットワークとはこういうことかと下らないことに納得する。
ひとりの夜。
こんな時間に外出しても、誰も心配などしない。
僕はひとりだ。
どこまでもひとりだ。
別に寂しくはない。
寂しいから、ではない。
必要だから、だ。
最後の夜。
無茶しても勝手をしても、無責任でいられた。
そんな、ひとり身の自由を満喫する、最後の夜。
後悔なんてしていないよ。
・・・ちょっとしか。
夜が明ければ、これまでと何もかもが変わるのかな。
隣にはきっと、君がいて。
それはそれは、幸せなんだろうな。
だけど、どうしてもつきまとう小さな不安。
こんな僕で、本当にいいのかな。
僕は幸せになれるのかな。
君を幸せにできるのかな。
暑い夜。
もうじき、太陽はいつも通りに昇る。
孤独な散歩は、これでおしまい。
これからは君と、二人で歩く。
誰もいない住宅街の真ん中で、僕はぐっと背伸びした。