ひたすらに。無心で。目的もなく。
ただ言われるがままに、掘っている。
固い岩を砕き、砂利をかき分け、粘土を貫く。
手はとうに痺れて、感覚も分からない。
それでも掘る。
掘る。
掘る。
少しの休憩。
何故こんなことをしているのだろう、と考える。
命令だから。
やらなければならないから。
そこで思考は停止する。
よく、分からない。
溜息をつく。
そうこうしているうちに休憩時間は終わり、また作業に戻る。
何故、何故、何故。
ああ、どうしてだろう、頭が上手く働かない。
考えがまとまらない。進まない。
巨大な岩盤に遮られているような感覚。
停滞。
そして閉塞。
混濁した意識のまま、それでも穴を掘り続ける。
もう随分と深く掘った。
いつになったらこの作業は終わるのだろう――。
そう思った矢先。
急に、掘るのを止めろと言われる。
毒が出た。
無色、無臭の気体で、本当にそれが毒なのかも分からない。
しかし、とにかく止めろと言う。
やむなく作業を中断し、地上へと這い上がる。
困った事態になったようだが、何にせよこれで体を休めることができる。
手も足も、もう疲れきっていた。
とにかく何もしたくなかった。
調査の結果、間違いなく毒であったらしい。
穴を掘る計画は中止となった。
そして今度は、その穴を埋めよという命令が下った。
ひたすら掘り進め、訳も分からないまま中断した、その穴を。
今度はとにかく埋めよと言う。
やむをえず、かき分けて山と積もった土を、深い穴へと放り込んでいく。
ざく、ざく、ざく。
埋める。
埋める。
埋める。
ああ、何か、考えていた。
考えていたはずなのだが。
それすら、もう忘れてしまった。
曖昧に広がるこの深い穴の中に、落としてきてしまったのかもしれない。
ああ――。
僕は一体、何をしているのだろうか。
ラベル:小説