2012年04月24日

【超短編小説】A子の日常

これは、私のとある一日の記録。

女子高生である私は、朝、慌ただしく準備をして学校へと向かう。
家を出てすぐ、白く丸っこい、猫が突然変異したような小動物に声をかけられた。
「ねえ君! 魔法少女になってみない?」
聞こえない聞こえない。
私はそれをスルーして足早にその場を去る。
背後でまだ何か言っている。知ったことではない。

何の変哲もない交差点。
その曲がり角の前で、嫌な予感がして立ち止まる。
「遅刻、遅刻ー!」
パンを咥えた男子生徒が目の前を走って行った。危うくぶつかるところだ。
というか、同じ学校の制服だったが学校は逆方向だ。
どこへ向かうつもりなのだろう?

何とか無事学校へ辿り着く。
朝のホームルーム、先生が転校生を紹介した。
勿論、先程ぶつかりそうになった男子生徒である。
そして昼休み、その転校生に声をかけられる。
「ねえ君、どこかで会ったことあるよね?」
「ありません」
敬語で拒絶した。ナンパは間に合ってます。

下校時。
いつもの帰り道に、おぞましき怪物がいる。
ああもう、仕方ない。
私は迷わず遠回りをし、怪物を避ける。
後ろから、
「フハハハ! 俺様は魔王軍四天王のひとり!」
「何だと!? 戦うしかないようだな! 変身!」
というやり取りが聞こえた。
住宅街での四天王との戦闘はご遠慮ください。

帰宅。今日も疲れた。
「あら、おかえりなさい」
奥のキッチンから、母親の声がする。
「今日、転校生が来たんだってね」
「うん」
「その転校生は――こんな顔だったかぁい!?」
キッチンから母親が顔を出す。のっぺらぼうである。
「そうそう、そんな顔」
付き合ってられない、と適当に流し、私は2階の自室へこもる。

そんな一日。

はっきり言って、魔法少女やバトルヒロインに興味はない。
まして悲劇のヒロインなんて絶対にゴメンだ。
私は私。
平凡でいい。
背景でいい。
影の薄い、モブのA子で構わない。
お話の中心に居座って我が物顔で振る舞うなど、できるわけもないのだ。

明日も私は、名もないA子として生きていく。
輝かしい物語の端っこで。
何事にも干渉せずに、だけど強かに、生きていく。


ラベル:小説
posted by いずみ at 13:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 超短編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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